歯周病とは
歯周病について少し詳しく解説しましょう。
まず、歯周病とはいったどんな病気なのかについて説明しましょう。
こちらは虫歯と違って普通には病状の把握が難しく、一般の方にはいったいどんな病気なのか解りづらいかと思います。簡単に言えば歯周病は細菌の感染によって歯茎が炎症を起こし、ひどくなると歯がぐらぐらになってやがては抜けてしまうという恐ろしい病気です。
歯周病は 細菌の感染 によって起こりますが、細菌と宿主(患者)の体質的な関係でその症状が大きく変わってきます。わかりやすくいえば ほとんどの成人は歯周病に罹患しています。しかし深刻な病状に発展する人とほとんど問題なく経過する人がいます。これは体質ですので残念ながら変えようがありません。お酒に強い人やお酒に弱い人がいるのと同じだと考えてください。
「歯周病の原因は?」
では歯周病菌はどのようにして病気を進行させるのでしょうか?実はお口の中の唾液中に漂っている細菌が作用するのではありません。直接歯茎に接触している菌のみが病気を起こし病状を進行させます。それではこの細菌の固まりである歯垢を集めて歯茎に塗りつけてみましょう。しかし歯茎にいくら塗りつけてもすぐに唾液で流れ去ってしまいます。 実は歯垢は歯の表面に沈着します。そして、そのうちで歯茎に触っているところの菌のみが歯周病を発症、進行させる事が解っています 。
さて歯茎(歯肉)に歯垢(細菌の固まり)がさわったところでは何が起こっているのでしょう。細菌はお口の中の栄養分をえさとして分解し、菌体外毒素(リポポリサッカライドなど)を放出します。歯肉側からはこの細菌をやっつけようとして白血球が放出されます。このとき通常の血管の状態では細菌の攻撃に対して間に合わないために生体は血管を広げ、さらに白血球が遊走しやすい(出て行きやすい)環境を作ります。実はこの状態というのは外見的には赤く腫れて、触ると 歯茎から血が出る状態 として我々には認識されます。
このように歯周病菌と白血球は日夜歯肉縁(歯の付け根の歯肉)で戦いを繰り広げています。もう少し詳しく言うと、これら歯周病菌と白血球はお互いに相手を倒すために強力な化学物質を放出します。ほんとうに怖いのはこれなんです。この化学物質が歯肉の中に放出されると、確かに歯周病菌と白血球にもダメージがありますが、なんとこの毒素は何の関係もない歯を支えている歯槽骨までも破壊してしまう事になるのです。このように、歯周病に罹患していると時々急性発作と呼ばれるひどい腫れと痛みを起こすことがありますが、通常は慢性的に痛みもなく移行し、徐々に歯を支えている骨を破壊してゆきます。そしてなんだか少し歯が動くようになったなーと気がついたときにはすでに本来の骨の高さから3分の1まで破壊されていたなんて事になるのがこの病気の一番怖いところかもしれません。、さらにやっかいなことにこの破壊されて無くなってしまった歯槽骨は基本的に元の状態まで復活することはありません。(現在最先端の再生医療を導入した手法や生物学的製剤を用いることによりある程度は可能になりました)
歯と歯茎の境にある歯肉の溝のことを歯周ポケットと呼びます。通常健康な状態ではその深さは1~3ミリメートルで、もちろんこの深さを測るために刺激をしても出血は起こりません。しかし炎症が起きた歯肉では、腫れと支持骨の破壊によって深さが増し、ちょっとの刺激でも出血するようになります。このことが歯周病の診断の目安となります。
歯周病の進行を止めるためには、歯の根元の所や歯と歯の間の歯垢を毎晩お休み前に徹底して取り除くことが最も効果的手段であるといわれています。